中身はたった3行。世界中で使われているAIスキル「grill me(グリルミー)」を初心者向けにやさしく解説
「AIに頼んだのに、思っていたのと違うものが出てきた」
AIを使っていて、こんな経験はありませんか。私も数えきれないほどあります。そして最近ようやく、その原因がわかってきました。
AIが悪いのではなく、頼んだ側(つまり私)の頭の中が、まだ整理できていなかったのです。
自分でもぼんやりしていることを言葉にして頼めば、ぼんやりしたものが返ってくる。考えてみれば当たり前のことでした。
この「そもそも自分の考えが固まっていない問題」を、まっすぐ解決しにきた道具があります。それが今日ご紹介する grill me(グリルミー) です。海外の開発者の方が無料で公開しているもので、いま世界中で使われています。
この記事を読むとわかることは、次の3つです。
- grill me がどんなものなのか(ひとことで言うと何か)
- 中身がたった3行しかないのに、なぜここまで効くのか
- 特別な準備がなくても、今日からマネできる方法
専門用語はできるだけ使わずに書きますので、AIを使い始めたばかりの方も安心して読み進めてください。
grill me(グリルミー)とは、ひとことで言うと何なのか
grill me をひとことで表すなら、「AIが、面接官みたいに質問攻めにしてくれる道具」です。
grill(グリル)は英語で「網で焼く」という意味ですが、そこから転じて「厳しく問い詰める」という意味でも使われます。つまり grill me は「私を焼いてください」、意訳するなら**「私に質問攻めをしてください」**というお願いなんですね。
いつものAIの使い方とは、向きが逆です。
- いつもの使い方:こちらが説明して、AIが作る
- grill me:AIが質問して、こちらが答える。AIは作らない
「これを作りたいんだけど、まだフワッとしていて説明できない」というときに、AIが片っぱしから聞いてくれる。答えているうちに、自分の考えがだんだんはっきりしてくる。そういう道具です。
そして最後に残るのは、資料でもファイルでもありません。自分の頭の中が整理された状態です。ここが少し変わっているところで、実はこの道具、何もファイルを作りません。作られるのは「はっきりした考え」だけなんですね。
作った人と、驚きの「3行」
grill me を作ったのは、Matt Pocock(マット・ポコック)さんという方です。海外でプログラミングを教えている、その世界ではかなり有名な方だそうです。
ご自身が普段使っているAIへの指示をまとめて、GitHub(ギットハブ:世界中の人がプログラムや文書を公開・共有している場所)で丸ごと無料公開されました。誰でも自由に使ってよく、書き換えても構わない、という条件(MITライセンスと呼ばれるものです)で配られています。
grill me はその中のひとつで、スキルを配布しているサイトの表示によると、インストールされた回数は78万回を超えています(2026年8月時点)。かなりの人が使っている計算になります。
ここからが本題なのですが、私がいちばん驚いたのは中身の短さでした。
普通、こういう「AIへの指示書」は50行から150行くらい書くものです。ところが grill me の本体は、実質たった3行しかありません。中身を日本語にすると、こうです。
名前:grill me 説明:計画や設計を研ぎ澄ますための、容赦のない面接。 やること:面接(グリル)を始めてください。
これだけです。細かい指示は書かれていません。
では何が効いているのかというと、この「面接のやり方」の部分だけが別に用意されていて、grill me はそれを呼び出しているのです。面接の型を1つだけ作って、いろんな場面から呼び出して使い回す。この設計の潔さが、多くの人に刺さった理由なのだと思います。
もうひとつ、細かいですが良くできているなと思った点があります。この道具は呼ばれたときしか動きません。AIが気を利かせて勝手に質問攻めを始めることはなく、こちらが「グリルして」と言ったときだけ起動します。急に面接が始まったら、さすがに困りますからね。
実際にどう進むのか
進み方には、はっきりした型があります。
「今なら答えられる質問」だけを選んで聞いてくる
これがいちばんの肝です。
たとえばセミナーを企画するとき、「値段はいくらにしよう」から考え始めると、まず迷子になります。誰に向けたセミナーかが決まっていないと、適正な値段なんて決めようがないからです。
grill me は、まず頭の中で「決めるべきことの地図」を広げます。そして、前提がすでに揃っていて、今この瞬間に答えられる質問だけを選んで聞いてきます。他の決定待ちになっている質問は、まだ聞きません。
答えると、地図を引き直して、次に答えられるようになった質問を出す。これをくり返していく形です。
質問には、必ず「おすすめの答え」が付いてくる
質問の見た目は、こんな形に決まっています。
❓ Q1 - 誰に届けたいか:このセミナーを受けて「来てよかった」といちばん強く思うのは、どんな状況の方でしょうか。➡️ おすすめ:AIを触ってはみたけれど、仕事で使えるところまでいけていない方
注目していただきたいのは、最後の ➡️(おすすめ) です。質問しっぱなしにせず、AI側の「私ならこう答えます」という案が必ず一緒に付いてきます。
これ、地味に見えて相当ありがたい工夫です。ゼロから考えるのは大変ですが、「たたき台があって、それに賛成か反対か」なら、ずっと答えやすいですよね。「うーん、それはちょっと違うな」と感じた瞬間に、自分が本当に思っていたことが出てくる。そういう仕掛けになっています。
調べればわかることは、聞いてこない
もうひとつ、はっきり決められているルールがあります。
調べればわかることは、絶対に人に聞かない。
たとえば「同じようなセミナーの相場はいくらですか?」と聞かれても、答えられませんよね。それはこちらが知りたいことです。だから grill me では、そういう事実はAIが自分で調べにいくことになっています。
人に聞くのは、自分にしか決められないことだけ。誰に届けたいのか、何をあきらめて何を選ぶのか、どうなったらやめるのか。ここに集中してくれるので、話がどんどん進みます。
聞くことがなくなったら終わり
終わり方も決まっていて、地図の上に未回答の場所がなくなったら終了です。回数で区切るのではなく、「何ひとつ、なんとなくで済ませていない状態」になるまで続きます。
日本の利用者の方の体験談を読むと、18回にわたって質問され続けた、という例もありました。所要時間はだいたい20〜30分といったところのようです。
なお、原典の作り方では答えられる質問をまとめて出してくる形になっています。「1問ずつ聞いてほしい」という方は、最初に一言そうお願いすれば、その通りに進めてくれます。実際、そうやって使っている方も多いようです。
使い始めるには
すでにClaude Code(クロードコード)をお使いの方
Claude Code というAIの道具をお使いなら、下の一行を打ち込むだけで入ります。
/plugin install mattpocock-skills
これで grill me を含む20個以上のスキルがまとめて入り、あとは /grill-me と打てば面接が始まります。無料です。
特別な道具をお持ちでない方(こちらが本題です)
ここが大事なところなのですが、この考え方は、いつものAIでそのまま再現できます。中身はあくまで「AIへの頼み方のルール」だからです。
ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも構いません。次の文をそのまま貼り付けて、最後にご自分のテーマを書き足してみてください。
これから相談したいことがあります。あなたは何も作らないでください。代わりに、私に質問だけしてください。ルールは5つです。1. 質問は1回につき1つだけ。まとめて聞かないでください。2. 毎回「私ならこう答えます」というおすすめ案も一緒に出してください。3. 調べればわかることは聞かないでください。 私にしか決められないことだけ聞いてください。4. 今の時点で答えられる質問から順に聞いてください。 他のことが決まらないと答えられない質問は、後回しにしてください。5. 難しい言葉は使わず、やさしい会話調でお願いします。聞くことがなくなったら、「決まったこと」「途中で変わったこと」「保留にしたこと」「次にやること」の4つに分けてまとめてください。相談したいテーマ:(ここにご自分のテーマを書いてください)
ポイントは、最初に「作らないでください」とはっきり伝えることです。これを書かないと、AIは親切心から途中で作り始めてしまいます。
向いている場面・向いていない場面
万能ではありませんので、正直にお伝えします。
向いているのは、こんなときです。
- 新しい企画を立ち上げるとき
- 提案書や応募書類を書く前の、考えの整理
- 記事のテーマは決まったけれど、切り口が定まらないとき
- 「やるかやらないか」の判断で迷っているとき
逆に、向いていないのはこんなときです。
- すでに中身がはっきり決まっていて、あとは文章にするだけのとき
- 5分で終わらせたい急ぎの作業
- 事実を調べたいだけのとき
要するに、**「モヤッとしているとき専用」**の道具だとお考えください。
そしてもうひとつ、公式の説明にもはっきり書かれている大事な注意点があります。
ぜんぶ「はい、それでいいです」で答えると、中身のないものしか残りません。
おすすめ案が出てくるので、つい流されがちなのですが、それでは意味がないんですね。「いや、そこは違う」と言い返したときにこそ、いちばん価値のあるものが出てきます。うまくいっているセッションでは、必ずどこかで反論しているものだそうです。
まとめ
今日お伝えしたことを、3点に整理します。
- grill me は「AIに質問攻めにしてもらう」無料の道具です。作らせるのではなく、聞かせる。それだけで、出てくるものが変わります。
- 効いているポイントは3つ。今答えられる質問から順に聞くこと、おすすめ案を必ず添えること、調べればわかることは聞かないこと。本体はたった3行でも、この型がしっかりしているから機能しています。
- 特別な道具がなくても再現できます。上のコピペ文を貼るだけで、お使いのAIで今日から試せます。
AIは「答えをくれる相手」だと思われがちですが、私は 「いい質問をくれる相手」としての価値のほうが、じつは大きいと感じています。答えは、たいてい自分の中にあります。ただ、それを引っぱり出す質問が足りていないだけなんですね。
次に何か企画を考えるとき、いつもの「作って」を、一度だけ「質問して」に変えてみませんか。20分後、自分でも驚くくらい話が進んでいるはずです。
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